Durston
テントのメンテナンス
一つひとつの手入れが、
ギアを物語に変える。
X-Mid 1 または X-Mid 2 テントの修理方法についての説明です。
X-Midシリーズの生地は両面に異なるコーティングを施した生地を使用しています。そのため、テープや接着剤の接着性は生地の外側と内側の面によって異なります。
具体的には、X-Midの生地は外側にシリコーンコーティング、内側にPEコーティングが施されています。シリコーン系接着剤は外側にのみ、PUまたはPE系接着剤は内側にのみ接着するので、生地の外側と内側で接着剤を使い分ける必要があります。
たとえば、シリコーン系接着剤はフライの外側やフロアの底面にのみ使用可能です。
【修理のポイント】
テントやギアにダメージが出てしまったとき、どのように修理するかを事前に考えておくと安心です。
小さな穴や擦り傷であれば、液体接着剤だけでも修理可能です。中くらいの穴の場合は、片面または両面に修理テープを貼り、必要に応じて反対側に液体接着剤を使うと効果的。小さな切れや突き刺し穴は、片面に修理テープを貼って傷口を閉じ、反対側に液体接着剤を塗ると効果的です。ただし、テントの一部が欠損している場合(例:溶け穴など)は、両面にテープを貼る必要があります。
大きな穴や長い裂け目などは、テープで応急処置することもできますが、ムーンライトギアでご購入頂いたお客様には1年間の無償修理保証、保証期間を過ぎても有償での修理が可能なので、「自分ではどう直したらいいか迷う…」という場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
【修理の方法】
テントを修理する方法には、主にいくつかのやり方があります。
◾️液体接着剤
最もよく使われるのは、Gear Aid の「Seam Grip」です。
▲左 : Seam Grip +WP 中央 : Seam Grip +SIL 右 : Seam Grip TF
Seam Grip +WP:標準版。テントの内側(フライの内側やフロア上面)の修理にぴったり。
Seam Grip +SIL:シリコーン系。テントの外側の修理に向き、厚めで穴の補修に便利ですが、大面積や縫い目全体のシールには向きません。
Seam Grip TF:PU系。薄めで縫い目や生地のシーリング用。穴の補修には少し薄すぎることがあります。
その他の接着剤も使える場合がありますが、まずはスタッフサックの表と裏の生地などで試してみるのが安心です。
◾️修理テープ
修理テープやパッチを使うのも簡単な方法。
液体接着剤に比べて、大きな裂け目や穴の補強がしやすいのがメリットです。
ただし、貼り方が不十分だと剥がれやすくなったり、色が合わないと目立つ場合がある点には注意が必要です。
Gear Aid 「Tenacious Tape」は軽量で生地裏に接着剤付きのため扱いやすいのが特徴。
Tenacious Tape(PU系):テント内側用。セージ色でX-Midに近い色味。
Tenacious Tape Sil(シリコーン系):テント外側用。ライトグレーで、シリコーン系接着剤で接着。
『使用時のポイント』
テープを貼る際は、生地が乾燥しており、汚れや油分がない状態が重要です。アルコールで拭くとより効果的ですよ。
周囲にも少量の接着剤を追加して端をしっかり接着。
このとき、生地の表裏をしっかり確認しましょう。シリコーン側にはシリコーン系接着剤、PU側にはPU系接着剤を使う必要があります。
虫除けネットの損傷について
小さな穴であればGEAR AIDのMESH PATCHESがおすすめ。
大きく破損した場合は無理に補修せず、MLGにご相談ください。
◾️縫い修理
裂け目やほつれがある場合、縫い直すのも有効な方法です。
軽量テントやギアは、生地を傷めないように優しく扱うのがポイントです。
『縫い方のコツ』
細めのナイロン糸やポリエステル糸を使うと丈夫で目立ちにくくなります。
縫う際は、生地を引っ張りすぎず、自然なテンションで縫いましょう。
『補強のポイント』
ほつれの先端や角は、縫い終わりに返し縫いをしてしっかり固定すると安心です。
また、強度が必要な箇所には、小さめのパッチを併用するとさらに安心です。
縫い修理はご自身で行える範囲もありますが、ギアの構造や素材によっては縫い方が難しい場合もあります。無理に縫おうとして生地を傷めるより、一度、ムーンライトギアの修理担当にご相談ください。
ここで紹介するリペア道具を正しく使うことは、ただの補修以上の価値があります。
道具の使い方や生地の特性を知ることで、テントへの理解が深まり自然と愛着も湧いてきます。リペアの経験を積んでおくと、いざという時に冷静に対処でき、山での安心感につながりますよ。
正しい道具を正しく使うことが、テントの寿命を延ばし、長く安心して自然の中で過ごすための大切なポイント。
自分の手でテントを整えることで、道具としての価値だけでなく、使う時間そのものも豊かに。小さな手入れが、次の山行の安心と楽しさにつながります。
COLUMNコラム
自分で手入れやリペアをしたことで特別な存在になるギア。
小さな裂け目や擦れ傷は、山での時間や思い出の証。傷ではなく、旅の記録だと思っています。 手をかけるほどに愛着が増し、世界にひとつだけのギアとして、使うたびに「あの山行」を思い出す。
だからこそ、日々のメンテナンスには価値があると思います。
やっている時もとても楽しい。手をかけた分だけ長く使え、そのギアを使って過ごす 時間がさらに濃く、豊かになっています。
writing / Yokoyama