海千山千會
阿波 サーフトランクス わくらば
使えば使うほど体に馴染む
藍染の特別なショーツ
山に、川に、海に、普段使いに、いつでもずっと履いていられるショートパンツが欲しいと常に探していた。
そして僕の強い想いが友人に届き山口輝陽志を紹介してもらった。
彼は徳島県鳴門市の NALUTOTRUNKS (山口縫製) で、僕が理想とする素肌に履いた時の肌触りの良さ、使っていくうちに体に馴染む仕立て、過酷な使用に耐えるタフネスさを備えたサーフトランクスを縫っていた。
コットン100%で作られた柔らかいサーフトランクスは、世界中探してもあまりない。
さらにNALUTOは裏地に吸水速乾の薄いライナーを縫い付けてあり、いつでもサラッと履けるのがポイントだ。
真夏にノーパンで履くとサイコーに気持ちが良い。素肌を包み込んでくれるような着心地は、間違いなく唯一無二と言えるだろう。
そのトランクスをどう僕が料理するか、相談に行ったのは立沢トオルのところだ。
どうして海や山に行くんだろう。山では何が怖いんだろう。僕たちはそんな話をとりとめなくした。
必要なのは機能だけじゃない。言葉には出来ない何かがある。そういうヒントが海や山にある。こうして海千山千會が誕生した。
山に入る時の気持ち、お祓いとか呪的なこと、日本の美、彼以外にそれを昇華出来る人はいない。
そしてアロハの柄をわくらば (病葉) で表現するとは、流石だった。
さらに藍染をArtとして昇華したワタナベズの藍で、わくらばのグラフィックを染める事が贅沢にも出来た。
藍染には昔からの先人の知恵で虫や蛇を寄せ付けない事。
着ていると擦り傷や肌荒れが直ったりと実際に薬理的効能を期待し、旅の服として活用されてきた。化繊ばかりの現在では意外であるが藍で染めた生地は山を遊ぶには最適な染技術である。またジーンズのように自然な色落ちが美しく魅力的だ。
最高の素材と縫製、アート、藍染によって出来たこのショーツは決して安くはない。
しかしエージングを楽しみながら履きこなしてゆく年月を想像して考えてもらいたい。
そして擦れたり穴が空いたら、ぜひ鳴門の工場に連絡をして修理を依頼してもらいたい。
「よぉ~履きこみましたねぇ、コレ。」きっと笑って山口輝陽志が出迎えてくれるだろう。
海千山千會 千代田高史
藍染めのナルトトランクスのグラフィックの題材を探していた頃、公園でブナのわくらば(病葉)に出会った。枝についた多くはわくらばで驚いたと同時に納得もした。
東京の公園だからという訳ではなく、これが自然の姿であるように思えたから。
世界の多様性はちっぽけな人間の考えでは到底及ばない。そう思うとわくわくしながらコンビニ袋にわくらばを集めている自分がいた。
出家と申し旅といひ、泊りはつべき身ならねば、いづくを宿と定むべき、その上この須磨の浦に 心あらん人は、わざとも侘びてこそ住むべけれ。
〽わくらばに問ふ人あらば須磨の浦に 藻塩垂れつつ侘ぶと答へよ
と行平も詠じ給ひしとなり。又あの磯辺に一本の松の候を、人に尋ねて候へば、松風村雨二人の海士の旧跡とかや申し候程に、逆縁ながら弔ひてこそ通り候ひつれ。
ー歌曲『松風』
雲や水の様にさだめるところない旅の僧ですから、樹下石上を宿とし泊まるところに贅沢は言いませんよ。須磨の浦なんて風雅な心があれば、とりわけ侘び住いしたいところじゃないですか。
〽マジないと思うけど、聞いてくれるダチがいたならさぁ
ほとぼり冷めるまでスマのビーチで、ナミダ垂れながしてワビシー田舎暮らしってわけよと行平が詠んだ歌がありますよね。また浜辺の一本松を人に尋ねたら、松風村雨の二人の海士の旧跡だそうですね。通りがかりの縁で回向してきましたよ。
ー歌曲『松風』 意訳:立沢木守
〽わくらばに問ふ人あらば須磨の浦に 藻塩垂れつつ侘ぶと答へよ 行平
在原行平の和歌の冒頭の『わくらば(邂逅)』は、思いがけず出会うという意味の言葉で、このサーフトランクスのグラフィックのモティーフである『わくらば(病葉)』とは別の言葉である。
しかし僕は古今和歌集のこの歌に、サーフトランクスに与えたいものが詰まっていると思った。
それは『もののあはれ』という無常観と美的理念だ。
ブナのわくらばを採取したのは新緑盛りの頃だった。
気候もよく樹々は青々と生気に満ちた葉を実らせ輝いていた。
しかしその葉の多くは小さな穴が沢山空いるわくらばだった。僕はわくらばを行平中納言や光源氏に重ねて見ていた。
〽わくらばや大地に何の病ある 虚子
高浜虚子の句にある『わくらば』は病に冒された葉をいう言葉だ。
何のというところが不気味だ。
エバに応じて禁断の果実を食べたアダムには『地』という意味があり、地が呪われた事によって実りが減少し食料を手に入れるのに人間は労苦を強いられる。
我々はエデンの園から追放された。
〽凶作や天地に何の呪いある 木守
人は過去幾度もそう思ってきた事だろう。神も楽園も人の頭の中にしか存在しないものではある。
けれど人はそれを外に有るものとして扱っていかないと、遣りきれない現実に置かれ続けている。
善悪の知識の実を食べた二人は、自分たちが裸である事に気づいてイチジクの葉で腰を覆った。
文明の歴史の実を食べた二人は、自分たちが人である事に気づいてわくらばのトランクスを履く。
海千山千會 立沢木守
作家紹介
■立沢木守
1962年東京都生まれ
グラフィックデザイナー。
海千山千會の同人である。
製品紹介(縫製)
■NALUTO TRUNKS & CO. ナルトトランクス(山口縫製)
徳島県鳴門市で1975年からスイムウエア、サーフトランクスを
一枚一枚に心を込め丹念に縫製しているファクトリーです。
量産品では得られない履きご心地には定評があります。
製品紹介(藍染)
■Watanabe’s
藍師・染師 渡邉健太
阿波藍の産地として知られる徳島県上板町を拠点に、藍の栽培から、染料となる蒅(すくも)造り、藍染液の仕込みと染色、製品に仕上げるまでを自らの手で一貫して行う。蓼藍という植物の葉を乾燥、発酵させてつくる蒅をもとに、日本の伝統技法 ’’天然灰汁発酵建て’’ を用いてつくられる藍色は、深みのある、冴えた色合いが美しく、色移りしにくいという特徴を持つ。
古き良き日本の伝統を残しつつ、新たな機軸で藍を伝えるべく、国内外で幅広く活動を行う。
SPEC / 商品スペック
サイズ | ウエスト(cm) | 長丈(cm) |
---|---|---|
28 | 71 | 43.5 |
29 | 73.5 | 43.5 |
30 | 76 | 43.5 |
31 | 78.5 | 43.5 |
32 | 81 | 43.5 |
33 | 83.5 | 43.5 |
34 | 86 | 43.5 |
インナー : polyester100%
※サイズ選びの参考として
30サイズ
(172cm/62kg 中肉中背)ジャストフィット
※ウエストサイズでサイズをお選びください。長丈、股下は全て同じです。
※サイズ感はあくまで目安となります。
※実際の着衣長は下図とサイズ表を参考にしてください。
※より詳細なサイズ感を知りたい方は、メール、TELにてお気軽にお問い合わせください。
COLUMNコラム
通常のNalutoTrunksよりも軽く、生地が柔く仕上がっているのが最高に気持ちよくて、山を歩いたりだけでなくデイリーウエアとして毎日着れるところがとてもに気に入っています。
青地に白色のグラフィックがパキっとのっているいるのではなく、ぼやけて、薄いグレーになっているところなどもあり、一つ一つ、味があるプリントが最高にかっこいい。自然な色落ちを毎年楽しみながら何年も履きたくなります。
ワタナベズの染色は色移りもなく、しっかりしているのが特徴。海でも山でもこれ一つで、直しながら使っていきたい特別な一枚かと。
生地を何度も何度も染めるため限られた布しか作れないので限定の数しかご案内できないのが心苦しいですが 素晴らしい出来に仕上がりましたので、ぜひご検討を。
writing / Chiyo