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信濃大町から雲の平へ。じっくり味わう裏銀座の旅 2025-07-12
2025年7月 北アルプスの裏銀座を越えて雲の平周辺を味わう山行に出かけた。
友人である雲の平山荘の伊藤二郎氏が小屋明け前に会合があるので遊びにきてみては?と言うので誘いに乗った形だ。一人の山行。8月中旬から行く予定のアメリカのATのセクションハイクの道具の確認をしながら久々の裏銀座と小屋開け前の雲の平に集まる人々に興味があり、結果3泊4日の “ひとり”と”出会い”を相互に味わえる充実した時間となった。

今年北アルプスは主要な登山口の一つ新穂高温泉が通行止め(7/9現在もう開通見込みが経っているとのこと)でスタートは信濃大町側からアクセスする七倉ー高瀬ダムを選んだ。ダム好きが集まる水色のエメラルドブルーの湖畔は一見の価値がある。南に進めば湯俣to伊藤新道だが、東に進めば短時間で烏帽子の稜線に上がれるブナ立尾根がある。
1日目(烏帽子までの急登を行く)
車で七倉温泉前に停車。ちょうど停まっていたタクシーに乗車し(2700円)ちょっと楽をしてブナ立尾根の登り始めは12時。
北アルプス三代急登と言われる高低差1500m、尾根まで12から始まり1までカウントダウンしてくれるのが特徴だ。
歩き始め水2.5Lとフルの食料、お土産のジンが重い。すぐに息が上がり汗が吹き出してくる。
無駄にウエアを汗で濡らしたくないのですぐ上着を脱ぐ。トップスにOMMのCOREVESTのみ、下着にCOREBOXSERの上に軽量のMLGの新作SWIFT SHORTSのみで歩く。脇空いたベストは涼しいが汗だくは変わらない。だけど濡れたあとの乾きやすさは大きな武器と感じた。このあともテン場からあらたに歩き出すとき、山小屋から出発する時、メリノウエアではぐしょぐしょのままでもCOREは違う。この復元力の高さを4日間を通して改めて実感したかたちになった。
SWIFT SHORTSは自分のような腿が太い人でも似合う絶妙な丈がいい。100gちょいの履いていないような軽さと絶妙な厚みの生地とポケットに携帯やカメラ行動食を雑多に入れられること、ブッシュが濡れていても乾きが早いことでこれもATの時のメインの服に決定した。1日の終わりに湖にドボンしても朝には履いているうちにすぐ乾いてくれるだろう。

また今回DUSTONのカーボンTrekking Polesもテストで持参。
2025年にアップデートしたkomperdellに別注した確かな作りでバスケットも取れづらく歩きながら可変がすぐできるのがいい。登りでは110cm通常は稜線上は115cmと直感的に素早く長さ調整ができる。太めのカーボンは壊れにくくスパスパと決めたい場所に刺せる。一本137g.軽い。特に帰り巻き道で身体を預けて結構ハード乗ってみたけど曲がる気配が全くなかったのでこれも実践で良さが確認できた。軽さならOMMのセクションポールだがロングトレイルに持っていくならこっちを強さを選びたい。当店でも夏終わりには発売になると思うのでお楽しみに。

あまり時間を気にしないで一人で急登を登っていると息があがりすぐ立ち止まっては空を見上げてぼーっと物思いに耽ってしまいがち。なかなかスピードが上がらないので、途中そうだ心拍数をみてみようと思いつく。最近自転車によく乗るので投入したCOROSの腕時計を心拍計で画面固定し160bpmを越えないように調整しながら歩いてみると次第にゆっくりといいペースを見つけられた。
リズムを刻むように心肺を抑えることに熱中しているとあっという間に激しい登りも終わるのでこのやり方は結構おすすめ。
ブナ立の数字の8を超えたあたりで雨が降ってきたので雨音のフィールドレコーディング、良い雷の音も1テイク取れた。鳥の声と雨音、とりあえず最近は録ってみることにしている。
かなり降ってきて止まっているので寒くなってきた。DDジャケットとDDパンツ(今回のMVP.靴のままガバッと履けて水に弱いGRの入ったファニーパックごと被せれて防水力もアップできる。)の上下を着込んで音を取りつつ見上げると大きなブナが霧の中に聳え立っていて壮観。歩を止めるのも歩くのも自分勝手でよい。程なく稜線。
上り詰めるとすぐに烏帽子小屋。小屋開けの準備をしている方に聞くとテン場を使用して良いとのことなのでお金を払い幕営させてもらった。時刻は四時。

烏帽子のテン場は具合の良い窪地にあり雨風に強くアルプスのテン場の中では安全性が高い場所。対して蚊や虫がいると予想されたので幕はちょっと豪華にDURSTONのX-mid2を持ってきた。函館のちよ散歩のYOUTUBEでも紹介させてもらったがこのシェルターは前後のドアを開けれるのでインナーの蚊帳を閉じた状態で風が気持ちよく通る。120cmの地上高も手伝い、濡れた行動着も雑多にちらかしつつ、中に干せるし、中で足が攣ることなく無理なくエアマットを膨らませられる。虫の羽音を聞きながら一人呟く「こいつはグレートな宿だ…」ULスタイルでやってると今宵の屋根があればいいと思う時が多い、意図して自然により近づきたいし実験こそ面白い。タープを張ったりビビィで凌いだり。これは”宿”と”屋根”の違いが明確にある。

2ヶ月間ATをセクションで歩く際、自分はどの幕にするか迷い中。マダニが多いのでバスタブと蚊帳は必須な中でこの”宿”の要素は大きい。X-mid1(720g)は現状優位な選択肢であるのは間違いない。軽さに振るならHMGのMID1は優秀だけどX-midは両側ドアで風が室内を気持ちよく通るのでメイン州の森の風を存分に味わえるんじゃないかと、なんとなくその光景が旅の情景にある。
これはUL野郎としてつまらない選択なのか?いや、選択肢の幅を広げる意味で価値があり、それならなにか他のことで軽量化したらどうか、、などと考えながら眠りについた。

2日目-誰もいない裏銀座を行く。
6時半ごろ動き出す。昨日は見えなかった快晴の稜線の中を三ツ岳、野口五郎、真砂岳と超えていく。誰にも会わない、自分しかいない裏銀座。こんな贅沢な時間はあんまりない。

歩き出し、濡れたハイマツで下半身がびしょ濡れになるのが嫌なのでDDパンツを履いて出発したが昼、晴天になっても結局最後までパンツを履いたまま歩けるサラサラ具合と蒸れなさに驚いた。だてに透湿性40000g/m2でない。シルエットの太さも肌に触れる場所が少なく快適。ショートパンツの行動着と合わせる際の気持ちよさは格別。積極的に長ズボンの運搬を省ける快適さです。
そしてしっかりDriducksのパンツよりもリデザインされているのでパンツだけ履いても格好がいいのが好きなところだ。
真砂から水晶は遠くから見るとその急登具合に萎えるけれども、ここも心拍160bpmを発動するとあっという間に水晶小屋の前だった。
ひとりの山行の良さの一つは”空っぽ”になれることだと感じる。目の前の一歩に集中していると「今ここ」の瞑想状態になる時がある。一人の山も皆で行く山も楽しさがそれぞれ。色々な状態の自分にアンサーを返してくれる山はやはり懐が深い。

岩苔乗越を超えるあたりでそんなひとり時間が終わる寂しさとこれから色々な人に会える期待との不思議な気持ちに。
ブレンディの粉コーヒーを入れて一息つきゆっくりとその境界を超えて歩き出す。
山小屋っていきなり目の前に出てくることが多いのだけど雲の平ほど見えてるのに到着しない小屋もないよなと思う。木道が光に照らされて幻想的で長い道がさらに「帰ってきたなぁ」感が高まっていく。今回で4回目の訪問だ。
最後雨に降られ小屋に着くと二郎さん真由香さん、いつものスタッフのみんなとアーティストインレジデンスの面々といつもお店に来てくれる雲の平トレイルクラブのトモさんやすこさん。そしてなんと今年から働くという旅に憩うの和泉君がいた。今晩は皆でパーティらしい。
雲の平山荘で2日間過ごす

今年から小屋に導入したという新スピーカー ADAM AUDIOがすんごいと二郎さんから聞いていたが音の再現力がすごかった。聴き慣れた曲もこんな音が隠れていたのか?なんて気づきもあると思うので雲の平に早めに到着できる人は場の状況があると思うが… 隙がありそうなら二郎さんに音出しを頼んでみるといいかもしれない。

雲の平山荘は荒野に着陸した宇宙船のように見える。この秘境で自然からインスピレーションを感じてものを作り上げていくアーティストインレジデンスが行われているようにこの場所が大好きな人たちと船に乗って眠り、時間を共有することはひとり時間では味わえない人との出会いの魅力があるなと今回改めて感じた。
周辺の自然を探索したり本を読んだり、話をしたり。出発する人を見送ったり。なかなか気合いを入れないと辿り着けないこの場所に集まる人たちとの触れあいは一人だけでは味わえない出会いの魅力が詰まっている。
自分は今回滞在した二日間で沢山の話の中から人にものを伝えていくアプローチの仕方についてたくさんの刺激をもらいました。



そして今回完成したばかりで見せてもらった雲ノ平周辺の登山道整備をしているKTC雲の平トレイルクラブの初めての活動報告書がとてもわかりやすく勉強になった。柔らかくて読みやすい。MLG三店舗でも観覧、購入できるようにしようと思うので今後、お店で見たら手に取ってみてもらえたらと思います。
旅立っていく人たちを見送ると徐々に山荘に静かさが戻る。この広大な夢のようなフィールドでどう過ごすか。山荘とテン場のハイブリッドで連泊もおすすめだ。
最終日 ファストハイクで下山
最終日は夕方から雨予報だったので朝5時に出発。
以前降りた竹村新道→湯俣は時間がかかり過ぎてしまうので変化はないけどまたブナ立尾根で降りることにした。下り基調だしちょっとファストな山行の感じで降りてみようと早足で下山してみた。初っ端途中祖父岳のトレイルが雪渓とガスでわかりづらく迷いつつも裏銀座の気持ちの良い稜線を明確にリズムよく進んでいく。

足元はVIVOの新作TRAILFLOW MID.足裏感覚を損ねることなく反発を感じて気持ちよく蹴り出すことができる。ミッドカットは足元がもたつくかなと思っていたけど全然そんなことないし個人的にはマグナより履きやすかった。新作のラグは雨の岩場でも粘ってくれるし帰ってきてからの足の疲れのなさもフレンドリー。初めてトレイルモデルを履く人にもおすすめできる楽しい靴だ。
今回のザックはPalanteのdesertpack。WhiteのUltraweaveは雨に強い信頼感がある。43Lで水と食料、お土産のお酒を背負ってもそこまで肩に残らなかったし帰りは腰ベルトを閉めてブレずにしっかり駆け抜けられた。ATでは最大で5日分の食料という感じなので現在最有力のザック。エアマットで行くならこいつで勝手だけどクローズドセルを持っていくかも今悩めるところだ。
TRAILFLOW MIDの心地よい反発を楽しみながら12時に高瀬ダムに着地した。
終わりに-信濃大町を起点とする冒険
そして今、伊藤二郎の兄である伊藤圭が信濃大町えきまえに宿を作っている。完成は7月20日ごろだと聞いているけれど例年通り7/18から裏銀登山バスが毎日運行になるし電車で信濃大町を起点にすれば今回の自分のピストン山行でなく新穂高や上高地に降りるワンウェイの山行も計画できる。都内からアクセスしやすい大町起点の構想は伊藤新道(今は橋が流されて通行止め)をはじめ裏銀座は比較的人が少ない山歩きが楽しめる北アルプスの入り口としておすすめです。
雲の平山荘で泊まるのも予約がなかなかとれない状況に見えるかもしれないが直前キャンセルを含め直近で空くこともあるとのことなので随時チェックしてみてはいかがでしょうか。

ひとりで始まり、人に出会い、またひとりに戻る。この山行で感じたことを咀嚼して家族や仲間に話すことで新しいことがまた、始まっていく...。
とても良い山でした。