- Home
- In the moonlight
- 伊豆七島バイクパッキングの旅 〜東京から東京へ〜
伊豆七島バイクパッキングの旅 〜東京から東京へ〜 2024-07-16
1月某日。
仕事終わり。
僕はマウンテンバイクに乗って船着場に向かう。
今にも張り裂けそうな高揚感を胸に、船へ乗り込み向かった先は伊豆七島「大島」
船の中ってなんでこんなにワクワクするんだ。
旅ってなんでこんなにワクワクするんだ。
子どものように船内を歩き回ったり、自販機でご飯を買って無駄に食べてみたり。
船上には大浴場もあるから、更にテンションが上がる。
風呂にも入って熱った身体にビールを流し込む。
仕事の疲れと程よい波の揺れも相まって良い気分で眠りにつく。
…
明け方の汽笛で眼が覚める。
久しぶりに降り立った"島"
変わらないワクワク感と、島特有の独特な雰囲気と空気感。
すぅ〜と島の空気を吸い込みバイクを漕ぎ出す。
そう言えば旅のメンバー紹介がまだだった。
MLG屈指のアドレナリン全開男、大阪店スタッフのちゅらさんこと中土さん(右)と、僕ら2人の共通の友人であり旅大好き芸人のMさん(左)。
この2人とは共に年末に開催された某トレランレースに出場したのだが、圧倒的な体力とスピードにぶち抜かれて唖然とした記憶が新鮮だ。
そんな体力の行き場を無くした2人と始まった大島一周のバイクパッキング旅。
ただ一周するのではなく今回のメインイベントは大島の中心にある三原山の裏砂漠をダウンヒルすること。
"日本唯一の砂漠"とも言われる三原山裏砂漠。
ここの砂漠地帯はダウンヒルのツアーが組まれるほど、人気のスポットでいわば聖地である。
そんな場所に心躍らせペダルを踏む。
道中には無料の動物園、博物館、温泉があったりと暇をさせない大島の観光スポットたち。
動物園に関してはお金を払わせてください、と言いたくなるほどのクオリティ。動物との距離感も近くて展示も面白くて楽しめた。
もう少し時期をずらせば椿の開花シーズンでもっと綺麗だったとのこと。
自転車を走らせてると、たまに目の前を横切る奇妙な動物。
どうやら正体は「キョン」
台風のときなどに、ここぞとばかりに動物園から脱走して繁殖しているらしい。
島だから許されるのか…笑
良いのか悪いのかはさておき、こういう島の雰囲気もひとつの醍醐味である。
…
僕のMTBはダウンヒル特化型のサス付29インチということもあってロードの上りがとにかくしんどい。
あー、本当にしんどい。
しかも一緒に行動してる2人が体力馬鹿なので余計にしんどい。
ただ、絶対にペダルから足を外したくないという変なプライドと根性だけでがむしゃらに漕ぎ続ける。
そしてようやく辿り着いた三原山に続くトレイル。
オフロードになればこっちのもんだ!とサスを解放させてグイグイ距離を詰める。
気付けば砂漠地帯に突入。
Mさんが何かのドラマ撮影地だと話してくれたけど、なんのドラマか忘れてしまった。
けど、とにかく綺麗というか初めて見た景色に思わずうっとりしてしまう。
その幻想的な景色ををバックにMTBを押して駆け上がる2人の構図にも心躍る。
空、海、砂漠、その3色で形成された独特な風景。
ここは"異世界"である。
"非日常" というワードが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
それはアドレナリンがガバガバ放出されている合図でもある。
疲れが一気に吹っ飛び「これだから止められないなぁ」とボソッと呟く。
そして途端にMさんが「行ってきま〜す!」と軽い感じでダウンヒルを始める。
一瞬で消えた。
「うわ〜、楽しそう〜」と心の声が漏れつつ隣を見ると、鼻息を荒げてハアハアしてるちゅらさん。
今にも爆発してしまいそうだ。
我慢の限界だったのかスマホの撮影ボタンを押した瞬間に叫んで飛び出した。
流石は別名「MLGのスピードスター」
大きな岩がゴロゴロ転がってる斜面をもろともせず爆漕ぎ。
尊敬している先輩だが本当に危険な男である。
僕はMLG屈指のビビリなので恐る恐るスタート。
それでも体感では相当スピードが出てる感覚で、「フォー!」とか叫んで皆んなと合流したけど撮影してもらった動画を見てゲンナリした。
それからどれくらいだろうか。
15分くらいペダルを漕がずに砂漠をダウンヒル。
言葉に例えづらい。
今まで感じたことのない15分間だった。
本当に楽しくて、だけどそんな時間はあっという間。
ゴール地点で2人が待っていてくれた。
叫びながら興奮と歓喜のハイタッチをしつつ、ふとちゅらさんの顔を見たときに次に発する言葉がすぐ分かった。
ちゅらさん「もう一回行かない?」
すごく悩んだ。というか時間が許すなら行きたかった。
けど、「また来年に取っておこう」という結論に。
「おかわりしても良いけど1回目のあの感動は味わえないよ!」ってMさんにスッと言われた時に、なんだか心に来るものがあった。
夕日に焼ける島の街並みと海を横目に「毎年の恒例行事にしましょう〜」なんて話しながら本日のキャンプ地に向かいペダルを踏む。
なんて良い時間なんだろう。
...
歩きじゃなくて自転車だからこそ街の色んなスーパーに行ってたくさんの食材を吟味できた。
そして到着、皆んな大好きトウシキキャンプ場。
めっちゃ綺麗なんですよね、このキャンプ場。
目の前には海がドカーンと広がっていてちょうど黄昏時。
この絶景は"おかわり"してたら見れなかった。
そしてもうこんなの我慢ができない。
「お疲れー!かんぱーい!」なんて大学生みたいな動画を撮りながら設営前にビールを流し込む。
あー、なんて幸せな瞬間。
少し暮れてきてお腹も減ってきたので現地の食材を使って鍋。
焚き火もできるキャンプ場だったので、薪を調達して焼き鳥をしたりと至極の時を過ごした。
…
そう言えば全くと言っていいほどギアの話をしてなかったけど、今回の宿はMLDのスーパーフラットタープ。
ポールは持ってきてないので、自転車3台を駆使して設営。
大きな屋根の下、3人で仲良くビビィ泊だ。
寝袋はキュムラスのXライト400にMLDのFKTビビィ。
就寝着は全身OMMのCOREマンと化してぬくぬく状態で爆睡。
…
翌朝。
最終日は船着場に戻る工程でのんびり行動…
の、予定が船着場に着くなりなんだか物足りなさそうな雰囲気。
ちゅらさん「船が来るまであと3時間ある」
嫌な予感。
Mさん「温泉でも入って美味しい定食屋でも行く?」
そんな生ぬるい提案は耳に入っておらず目線の先には三原山。
なんとなく覚悟はしていた。
一同「行きますか」
ということでまた地獄のロード登りが始まった。
まぁ確かに山頂までは自転車の乗り入れは禁止されていて、ダウンヒルの時も山頂からの景色は見れてないし火口も見れてない。
そう考えると登って見ておきたいという欲も湧いてくる。
そんなこんなで、途中で自転車をデポって2時間半くらい掛かったのか?
やっと山頂!
と思いきや想像以上に時間がギリギリで火口を一周することができずあっさり退散。
思ってた以上に時間がヤバい。
2時間半かけて登ってきた道を何分で降りれば船に間に合うんだ?
「うわ!やばいかも!」と焦りながら爆速で下山。
なんと、掛かること10分。
船着場に着いた笑
スターウォーズで言うところのハイパースペースに入った気分を味わう。
大島の街全体を見ながらの急降下は爽快感もあったし控えめに言って最高だった。
その後、無事にチケットも確保して船に乗り込み気付いたら気絶していた。
「仲間とバイク」
共に身体全部で島にぶつかってきた。
満足感、充実感、達成感で満ち溢れた旅。
そう言えば、同じ東京都なのにスマホ全くいじらなかったな。
Written by : Yusuke Yamazaki