UNHALFDRAWING
越前 眼鏡 見在 Bézier 21 アニメガネ
「真の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目を持つことだ。」マルセル・プルーストのその言葉のように、手強い山と対峙する強烈な山行を経験すると、目の前の景色がしばらく大きく変わって見える。
頰の感覚がなくなる強風、いつまでも見えない頂上。冷たい激流の流れ、寄せつけない花崗岩の硬さ。焦り、恐怖、安堵、そして開放感。様々な感情が濁流のごとく押し寄せる。ふと、遠くを見つめた先はいつもと違う色彩の景色が広がっていた。
見在(げんざい)とは今、目の前に存在している景色そのもののことを意味している。だが、そのレンズを通して同じ景色が、どのような色で見えるかは装着した人それぞれによって全く異なる。
僕はアメリカ東海岸のアパラチントレイルの森を毎日、毎日歩きながら自分の内と外の世界を俯瞰で見る日常を過ごした。ただただ歩く”いま、ここ”から繋がっている世界は、未来だけでなく過去の景色をも変えて見せてくれることを体験した。
アラレちゃんやのび太君は1ページ目の最初のコマから欲求に純粋だ。そうじゃないと話がはじまらない。アニメガネをかけたあなたから始まる”なんかいい感じ”の影響力はきっと小さくなく、世界を変えていくだろう。
UNHALFDRAWING 千代田高史

多くの人にとって、はじめての旅は絵本のなかだった。
ウクライナ民話『てぶくろ』のような作品から、子供たちは遠い異国への想像を膨らませる。それは旅のひとつに違いない。人は成長して実際に素晴らしい旅を経験した後も、小説や歴史のなかでも旅を続けていく。
井伊大老が桜田門で襲撃された年、一人のイギリス人が日本へやってきた。イラストレイテッド・ロンドン・ニューズの美術通信員で画家のチャールズ・ワーグマン(1832-1891)だ。彼は『ジャパン・パンチ』を創刊し幕末から維新期の日本を素描や漫画にした。
これら貴重な作品は岩波文庫『ワーグマン日本素描集』のなかで紹介されている。
当時ワーグマンが描いた少なくない日本人の姿は出っ歯で眼鏡をかけていた。そのせいか欧米では60年代までステレオタイプな日本人像としてそのイメージは引き継がれてゆく。
一方『ドラえもん』の野比のび太、そして70年代に入ると『魔太郎がくる!!』の浦見魔太郎、『名探偵コナン』の江戸川コナンと眼鏡をかけた主人公が登場し、眼鏡をかけたサブキャラクターにおいては枚挙にいとまがない。そこに日本の漫画家たちが西洋の呪縛から解放された、しようとする精神を感じる。ワーグマンから約100年の月日が流れていた。

980年『Dr.スランプ』の則巻アラレはアンドロイドであるにもかかわらず眼鏡をかけた。リドリー・スコットは2年後の『ブレードランナー』でレイチェルに眼鏡をかけさせることなど夢にも見なかっただろう。日本文化の最先端を今なお走り続けている漫画家の諸先生たちは、眼鏡の歩んできた道を、眼鏡の旅してきた時をキャラクターに刻むことを軽視しない。
ぼくたちは150年前にワーグマンの描いた丸眼鏡を探す旅へ出た。青い目で描かれた漫画から日本人の漫画を経て世界のMANGAへ。その扉を開いたのは鳥山明氏(1955-2024)によるところが大きい。
そしてDr.スランプこと千兵衛博士がアラレちゃんにした視力テストのギャグから生まれた丸眼鏡こそ、ワーグマンの描いたそれを再び世界へ登場させたのではないだろうか。「真の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目を持つことだ」のごとく。
ベジェ21アニメガネは、出っ歯で眼鏡をかけた日本人からDr.スランプ アラレちゃんまで日本人の眼鏡を見つける旅だった。
UNHALFDRAWING 立沢トオル
作家紹介
■MEGANEROCK
雨田大輔によるブランド 1980年鹿児島県生まれ
2007年福井県鯖江市に移住。
2014年独立『MEGANEROCK』立ち上げ。
眼鏡のデザインから施行まで自らの手で作り上げる。
その一貫したものづくりスピリッツに国内外に多数ファンを持つ。
▲鯖江・MEGANEROCKの工房にて
雨田氏がワルツを踊るようにひとつひとつ眼鏡を磨き上げていく。
SPEC / 商品スペック
縦幅 : 62mm
レンズ横幅 : 56mm
レンズ縦幅 : 56mm
鼻幅 : 18mm
■MOC/モカブラウン
■BRS/ブラウンササ
ヒンジ、パッドの破損はMeganerockで修理可能。
COLUMNコラム
一度見たら忘れない大きなレンズ。
奇をてらった眼鏡のようでいて思いの外アニメガネは誰にでも似合うことに驚く。
原作に忠実なブラック。大人な明るいBRS/ブラウンササ、じわじわと良さがわかるMOC/モカブラウンそれぞれに良さがある。
映画『ドラミちゃん アララ♥少年山賊団!』では近眼に気づいていないのび平に”勇気のもと”としてただの度入りのメガネを渡すことで大円団を迎える。
矯正道具としてみるのか、アイウェアと見るのか。
さて、メガネに求めるものはなにか、今までと違う対象として楽しめる強烈に個性的な一本は、今までと違う世界を楽しめるきっかけをくれるはずだ。
writing / Chiyo