UNHALFDRAWING
タイベックシート
い艸寝ゴザベック 御蓙候
Tyvek Sheetをグランドシートに活用するスタイルというのはULの装備の中でも特に特徴的な部分であろう。
Goliteの誕生は1998年、Ray way tarpをベースとした床のないCave 1には皆Tyvekのシートを小さく切って使用した。DuPont社のロゴが印字されたオリジナルのTyvekSheetはULハイカーのこだわりの魂のようなものであったように思う。
2012年、立沢トオルがTRANSIENT EXISTENCE時代に考案した百年輪グラフィックが世界初のオリジナルプリントを施したハイカーに向けたTyvekシートの起源だと認識している。
Jerry鵜飼のUltraheavyTyvekの登場は2015年。
もはや伝説的アイテムだが、2020年からまた新たにはじまったUHの世界のラグを再現するシリーズは今後、作者ごとのアンサーが繰り広げられていく予定だ。
そこにTRANSIENT EXISTENCEから10年の海千山千會としての回答をしたくなった。
ゴザを作りたい。そう立沢さんに伝えるとすでに熊本のい草の立派な茣蓙を持ってるとニヤリと笑った。
冗談を真面目にやりきる。その精神が詰まった最高の一枚が出来上がった。
海千山千會 千代田高史
TRAVEL IS HOME『旅を栖とする』というテーマで、江戸中期から末期頃まで庶民がしていた旅支度をトレースし、衣装や道具を現代版に差し替える試みで幾つか商品を用意した。タイベックの御蓙候は東海道の宿を表している。
十返舎一九作『東海道中膝栗毛』『続膝栗毛』は挿絵入りの戯作で、1802年から1822年にかけて出版され、江戸中期の旅行ブームに乗って大ベストセラーになった。
弥次郎兵衛と喜多八(北八とも)が財産を整理して、江戸より一路伊勢を目指す旅に出る。二人は狂言のシテ(主役)とアド(相方)に符合するが、後の『隠し砦の三悪人』の百姓の太平と又七や『スターウォーズ』のC3POとR2D2に凸凹コンビの珍道中は受け継がれてゆく。
弥次喜多道中は滑稽旅行記だが、当時を知る資料でもある。宿場では旅籠屋の客引き留女との掛け合いが行われる。女中への夜這いの失敗談。大名一行逗留中の本陣で供侍になりすましてただ飯。舟上で小便をするための竹筒を宿の亭主にもらうが、、。十返舎一九と名を偽ったがばれて宿を放り出される、などなど。宿にまつわる話が矢鱈と多いのだが、東海道の旅は五十三の宿を巡ってゆく旅なのかも知れない。
時代は下がって御一新の世、英国より冒険家のイザベラ・バードが密命を帯び来日する。バードは日本に七ヶ月滞在し、二年後の1880年『日本の未踏の地:蝦夷の先住民と日光東照宮・伊勢神宮訪問を含む内地旅行の報告』を二巻の大著にしてまとめた。
バードも宿屋(ヤドヤ)について書いており女中、虫、覗き、騒ぎ、プライバシーの欠如など、当時の日本を現代人に近いバードの目線から知ることが出来る。
UNHALFDRAWING 立沢トオル
SPEC / 商品スペック
COLUMNコラム
シルクスクリーンを施したTYVEKでなくフルカラー印刷の良さはこういったアイテムと相性がいい。ただ、色味の再現は難しく、何度も本物のゴザに近づけるよう色校正を行なったと聞いている。
2022年10月アメリカからPA'LANTEクルーが来日。彼らにこのゴザべックは相当刺さったようで気に入って持って帰った。
い草の匂いまで届きそうな再現性。必要最低限のタイポグラフィ。 旧人には折りたためる驚きの薄さは現代に旅支度に一役買う一枚だ。
writing / Chiyo