【北アルプス縦走 ルートα〜第四話〜】 2024-07-11

DAY4
黒部五郎→三俣→鷲羽岳→野口五郎岳→烏帽子小屋→烏帽子岳→烏帽子小屋

3時半頃起床。この時間まで寝れることに幸福を感じる。

4時過ぎ出発。スタートしてすぐはまだ暗いけれど、空が明るくなる気配がある。食料も減って荷物も軽くなったので明るい気持ちで歩ける。


4時半頃、登ってきた道を振り返ると朝の澄み渡った空に黒部五郎が見える。また来ますと挨拶する。

Kとは三俣山荘まで一緒に歩いて、そこで別れることにする。なんだかんだ行動中は一度も雨に降られなかったし、気持ちよく歩けてよかったねと天候に恵まれたことに感謝する。


5時半頃、三俣山荘が見えたとき、帰ってきたー!と叫ぶ。


6時前ぐらいに三俣山荘に着く。トイレを借りるときちょうど部屋を掃除しているムラムラさんを見つける。

おはようございます!と声をかけると、ビクッとびっくりしていたけど、すぐにおかえりなさいと言ってくれたのが嬉しかった。


ムラムラさんとしばらくお話して、7時前ぐらいに出発する。

僕は鷲羽岳を超えて裏銀座へ、Kは双六岳を超えて新穂高に向かうので、反対の道に進むことになる。

4日間色々あったけど、お互いありがとうと言ってそれぞれの道に進む。


歩いていると小屋の方から鐘の音が聞こえる。ムラムラさんが見送りの鐘を鳴らしてくれていた。不思議と足が軽くなる。感謝の気持ちでいっぱいになる。何度も振り返りたい気持ちを抑えて前に進む。また帰って来よう。

7:20には鷲羽岳山頂に着く。2日前は真っ暗の中通り過ぎたので、行動食を食べながらのんびり景色を楽しむ。


4日目は流石に疲れてるかなと思っていたけれど、食料が減って荷物が軽くなったので今までで一番気持ちよく歩ける。軽いって最高。


8:20頃、水晶小屋の前で烏帽子方面に進む。ここからは今まで歩いたことがない道。わくわくする。


歩いていると、水晶から赤牛への稜線が見える。2日前はあそこからここを眺めていた。ルートαのおもしろいところは、これから歩く山、これまで歩いてきた山を眺めながら歩くことができること。遠くから眺めているのと、実際に歩くのでは全然違う。山はいつも自分の想像を超えた風景を見せてくれる。


裏銀座は今まで歩いてきた道に比べるとアップダウンが少なくて歩きやすいと感じる。荷物が軽くなったからだけかもしれないけど。


真砂から野口五郎は少しガスっていたけれど、それが相まって別の惑星を歩いているような気分だった。

10時頃、野口五郎小屋に着く。特に用事はなかったけれど、小屋からの見晴らしが良さそうなので寄ってみる。


景色を眺めていると、そばに座っていたおじいさんに、よく日焼けして、足がショーツの色と同じだねと言われる。たしかにPA'LANTEのRedwoodと足がほとんど同じ色をしている。

今までどこを歩いてきたのかと尋ねられたので答えると、よく歩いたねと言われる。

僕は水を十分担いでいたので買わなかったけど、野口五郎小屋は水不足が深刻で1人500mlまでしか買えない状況だった。


しばらく歩くと、展望コースと花畑コースの分岐に出た。ガスってきていたので、花畑コースを歩く。水不足でも高山植物たちはしっかりと花を咲かせていた。


その後、展望コースを歩いてきたお兄さんに、その鈴いい音色ですねと声をかけられる。今回の山では千鈴の音色に何度も救われた。

そのお兄さんと烏帽子小屋まで一緒に歩く。トンボがけされたテン場の美しさに2人で興奮する。

「石を動かさないでください」という看板もあったので、枯山水のような世界観を表現しているのかもしれない。

興味深いテン場だし、昼から天気が崩れる予報だったので、今日はここで寝ることにする。

テン場の受付を済ませて小屋を出ると、お兄さんがこのまま下山するか、烏帽子岳に行くか悩んでいた。

まだ11時半ぐらいで僕も暇だったし、雨もまだ降らなさそうだったので、それなら一緒に行こうと提案する。

悩んだときはしんどい方を選んだ方がいい。

だいたい悩むときは、しんどいけど面白そうななことと、楽だけど退屈なことで悩む。それなら、前者を選んだ方が楽しい経験ができる。

小屋から烏帽子岳に向かう途中、登山道の草を刈ってるおじいさんに出会う。きっとこの人が枯山水のようなテン場をつくったのだろう。


前烏帽子から見える烏帽子岳はラスボス感がありますね〜とお兄さんが楽しそうに話す。烏帽子岳へのルートはなかなか険しかったので、翌朝の早朝、1人で歩いてたらスルーしていたと思う。一緒に登れてよかった。


一緒に小屋まで戻って、お兄さんとまたどこかで!とお別れする。


テン場でテントを設営をして濡れたものを干してると、横にいたおじさんに随分身軽ですねと声をかけられる。

楽したいからと答えると、

自分は25kg担いできたという。しかも50歳を超えてるそう。

25kgも担いで山を歩くなんて、8kgぐらいでヒィヒィ言ってた僕には想像するだけでゾッとする。

だけど、筋肉痛にならないための歩き方や夏の寝袋は化繊派など話が合うことも多く、山やギアのことで話が弾む。

夕方ぐらいから雨が降り始め、次第に雷雨に変わってよく眠れなかった。

第五話へ続く)

Written by : Yoshihiro Nakatsuchi