海千山千會
炎の象
火という漢字は🔥このような象形で世界に出現した。
そのかたちは卜文(甲骨文)から金文、そして篆文になると抽象化され、現在私たちが使っている漢字に近づく。
[炎](エン・タン・ほのお)会意 炎は火を二つ重ねた形で、燃えさかる焰(ほのお)をあらわし「ほのお」の意味となる。火を三つ重ねた焱(エン・ほのお)も炎と音・意味は同じである。ー『常用字解』白川静(2003)
炎の象(しるし)を示すにあたって、火を上下に重ねた古代人に凄みを感じる。彼らはいったいどんな風に炎を眺めていたんだろう。
[燎](リョウ・にわび)形声 声符は尞(リョウ)。卜文は木を組んでそれを焚く形に作る。説文に「尞、柴(さい)して天を祭るなり」とみえ、また別に燎において「火を放つなり」とする。尞を庭燎(にわび)、燎を燎原の意とする。書経に「火の原を燎(や)くが若(ごと)し。嚮(むか)ひ邇(ちか)づくべからず」という。野火を放って猟するを、燎猟という。ー『字統』白川静(1984)
火は食や暖のほか明かりとして利用された。だか昼の明るさと炎によるそれとは、古代人も現在人も同様とは思わないであろう。
月や炎には神秘性を感じる。
海千山千會 立沢木守
新月の山の夜は瞳を閉じていても開けていても違いがわからないほどの本物の暗闇がある。
その漆黒の中に身を預けていると次第に自分の手や唇、自分の身体を認識することが難しくなって、宇宙に対して自分の意識がただそこに浮かんでいるような感覚になる。
日常では味わえない真っ黒闇の世界はこの令和の時代を生きる自分の人生を超えて、人類の太古の記憶を呼び覚ます強烈な体験をもたらしてくれる。
そんな黒い闇を野外で力強く照らすランタンのようなもの作りたいと思った。炎自体の力を感じられる灯台のようなもの。我々は立沢さんが持っていた19世紀のフランス製のトーチをベースに再現していく作業に入った。
磁器での制作はONE KILN CERAMICSの城戸さんに頼みたいとかねてから思っていた。
10年以上前、transient existence時代の”HEAVY WEGHIT Porcelain” クッカーシリーズの制作はONE KILNEが行っていたと知る人は多くないが、久々の共作を海千山千會としてついに実現できることに興奮した。
ガラスで覆われた現代風のものではなく強風に強く消えない炎。
生命が宿ったかのように浮かぶそれは呪的な魅力がしっかりと宿っている。
海千山千會 千代田高史
作家紹介
■ ONE KILN CERAMICS(ワンキルンセラミックス)
Artist:城戸 雄介
鹿児島で活動する陶芸作家・城戸雄介氏の磁器ブランド“ONE KILN”
“ONE KILN” = “一つの窯”という意味が込められています。
「食卓に太陽を THE SUN TO A TABLE」をテーマにひとつの窯から様々な人と繋がることを目指し、プロダクトと手工芸の融合から生まれた、独自の世界観を鹿児島から発信しています。
SPEC / 商品スペック
外周 : 31cm
COLUMNコラム
ONEKILNの作る皿やボウルが昔から好きでASHシリーズを愛用しているのだが生成の色で作られるシンプルな磁器もまた美しい。
このトーチは長い時間かけて使える重厚さを持った特別な灯りで炎のゆらめきがとても美しい。
どんな時も明るく空間を照らしてくれる存在はゆったりとした時間だけでなく生きていく希望のようなものを与えてくれる特別なものだとも感じさせてくれる。
writing / Chiyo